キララタケ近縁種 part4


キララタケ近縁種のひだの断面
思い込みとは頑迷なものである。一度「サッカリヌスではないか」と思い込んだら、易々とは撤回できなくなっていた。
しかし、顕微鏡的な特徴においても否定的な材料が出てくるのである。それは側シスチジアの有無という問題であった。
ロマニエシの原記載(ラテン語ではなくフランス語だった)には、「側シスチジアがない」とは書かれていない。「側シスチジアは稀、あるいは無いかもしれない(Cystides faciales rares ou peut-etre nulles)」と書いてあるのだった。
しかし、件のコプリヌスには、ひだ切片を何度作ってみても、たいてい側シスチジアはあった。上の写真のように、縁シスチジアに比べればずっと少ないが、決して「稀」というレベルではない。
ただ、ロマニエシはサッカリヌスの縁シスチジアに相当する球嚢状細胞を「Cystides」とは呼んでおらず、「Cellules marginales」という言い方をしているので、球嚢状の細胞はシスチジアとはみなさなかったのではないか、と最初のうちは考えていた。が、よくよく読めば、やはりひだ側面に(稀に)ある楕円形の細胞のことを「Cystides faciale(側シスチジア)」とみなしているようであった。
この辺のことを理解するまでにはかなり時間を要し、菌学的な基礎知識の乏しさとともに、言葉の壁の厚さを痛感させられた。正直、ここまできても判読ミスの可能性は払拭しえない。
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