ザラミノヒトヨタケ
Coprinus phlyctidosporus Romagn.


2002.6.24 さいたま市で

傘径3センチ、柄の長さ7センチほどにしかならない小さなきのこである。姿形は、同じヒトヨタケの仲間のザラエノヒトヨタケにそっくりだ。強いて肉眼的な違いをあげれば、ザラエノよりザラミノのほうが心持ち小ぶりで華奢な感じがする。それから開いたときの傘は、ザラエノの場合も条線に沿って裂けることがあるのだが、ザラミノのほうがより裂けやすく、傘の縁から櫛状に裂けている場合が多いような印象を受ける。ただし、これは私の乏しい観察からの主観であり、客観的に妥当か否かは定かでない。
ザラミノとザラエノの違いを確認するには、胞子を見るのがもっとも手っとり早い。といっても、顕微鏡がなければ無理な相談なわけだが・・・。そう言わざるを得ないほど、肉眼だけでは判別しがたいということである。

「ザラミ」は漢字で書くと「粗実」で、胞子が粗面(ざらついたイボ状の表面)であることに由来する。ザラエノも含め、ヒトヨタケの胞子表面はだいたいが平滑なので、この仲間のなかではユニークな存在である。
また、ザラミノヒトヨタケは、アンモニアを好むきのこ(アンモニア菌)としても知られる。写真のきのこは、じつは自然に生えたものではなく、園芸用の尿素を土壌に撒き、人為的に発生させたものである。
散布時期はたしか4月の上旬頃だったと記憶している。春先に撒けば梅雨時に発生し、夏に撒いても秋には発生するようだ。散布量はいい加減で、だいたい畳半分くらいのスペースに1キログラムを撒いた。撒くというより、どばっとぶちまけて、足で適当に均しただけのこと。3カ所に撒いて2カ所で発生を見ることができた。発生を確認できなかった1カ所は、草がぼーぼーに茂りすぎて、どこに撒いたかわからなくなってしまった場所である。したがって、発生の確率は極めて高いといえる。相良直彦著『きのこと動物』(築地書館、1989)によると、日本に生えるアンモニア菌は40数種が知られているそうだが、尿素を撒けば必ず出るような気前のいいきのこは、まずザラミノヒトヨタケが筆頭のようである。

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