ササクレヒトヨタケ
Coprinus comatus (Mull.:Fr.) Pers.


98.05.20 浦和市郊外で

人が美味い美味いと言うキノコを食ったことがないというのは悔しいもんである。かつて私にとってはこのササクレヒトヨタケがそうだった。
同じ川口市に住むキノコ仲間の浅井さんの話である。「早起きして自転車で採りに行くんですよ。トーストに挟んで食うと美味い。それを食べてから出勤したことが何度もある」と、じつに美味そうな表情で話すのである。朝採りのキノコを朝食にするあたりが優雅でいいなぁと思ったのだが、ヒトヨタケの仲間はいたむのが早く、採ったらなるべく早く調理することが美味しくいただくコツのようだ。食べ頃は、雨傘をたたんだような状態の、全体が白く若いもので、黒ずんだものはそもそも食欲をそそらない。
まず根元を落とし、手で軽くこするように水洗いをする。すると、ささくれた鱗片がするりと取れ、白いつるっとしたキノコになる。傘が閉じていて泥が入り込む隙もないので、下処理は他の野生キノコより簡単だ。次に真ん中から縦に割る。柄は中空だが、身は厚い。
この日は半分はバター炒めに、残りの半分を和風の吸い物にした。歯触りがよく、バター炒めはなかなかいける。ご飯のおかずにもなる。吸い物のほうは、とくに旨味や香りがあるキノコではないので、いささか物足りない。三つ葉を千切って浮かしたらいい感じになった。
浅井さんは「とくに傘が美味い」と言っていたが、口の中でふわっとする感じは独特の風味である。和風より洋風や中華のスープに合うような気がした。

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