対物100倍 その2

より比較しやすいよう、画像のコントラストと明るさを上げ、画像サイズも大きくしてみた(といっても、元画像よりは小さい)。接眼15倍は600×450ピクセルに縮小してある。
被写体のサイズを等しくするために、接眼10倍は900×720に縮小。ただし、このサイズではモニターからはみ出してしまうので、右上角を起点に、15倍と同じ600×450にトリミングした。
 ビクセンWF10X



 ニコンHKW15X



 オリンパスWF15X


〔10倍は15倍より画質がいいか?〕
基本的に顕微鏡の画質は対物レンズの良し悪しで決まる。接眼レンズは、対物レンズが捉えた像を拡大して見やすくするだけである。したがって、拡大しすぎれば像がボケてシャープさが失われてしまう。だからアイピースは15倍より10倍のほうがいい。これは誰もが口を揃えて言うことである。
しかし、デジカメを使った顕微鏡写真にもそれが当てはまるかというと、そうとは言い切れないように思う。デジカメは、対物レンズが捉えた像をアイピースに輪をかけて拡大してしまうからだ。デジカメで撮った顕微鏡写真は、元画像では拡大によるボケが著しいため、必ず縮小して画質を引き締める必要がある。例えば15倍のアイピースを使った場合、15倍であることから生じた無効拡大のぶんも、縮小の際に同時に引き締められるんじゃないかと私は解釈している。したがって、アイピースが10倍でも15倍でも、あまり関係ないんじゃないか、と愚考するのである。
また、10倍と15倍を比較する場合、縮小率を変えて同じ被写体サイズにして比べなければ意味がないとも思う。例えば胞子の写真を撮ったとする。10倍と15倍では元画像における胞子の見え方は、15倍のほうが1.5倍大きくなるわけだが、大きく見えるぶんボケも目立ってしまう。しかし、同じピクセル数に縮小すればシャープさはほとんど変わらないのである。デジタル画像を表示する場合、画像の大きさとシャープさの兼ね合いを探りながら表示サイズを決めるわけだが、そうすると、10倍の接眼で撮っても15倍を使っても、結局同じくらいのピクセル数に落ち着くのではないか。
「15倍より10倍のほうがシャープだ」という人は、たいていの場合、縮小率を同じにして見たときの感想からそう言っているのである。そういうやり方で、ちょっと比較をしてみよう。下の2つの画像は対物100倍で撮影したもので、右はアイピースにビクセンの10倍、左はオリンパスの15倍を使用。画像はともに25%に縮小してある。
10倍のアイピースを使った左の画像のほうがシャープに見えるだろう。しかし、くどいようだが、画像を同じ割合で縮小して比べた場合、被写体サイズが小さいほうがシャープに見え、大きく写っているほうが荒くボケて見えるのは当たり前のことである。被写体サイズが同じになるように縮小した場合は、シャープさはほとんど変わらなくなる。
色収差は右の15倍のほうがいくぶん少ないので、シャープさに色収差を加味して考慮すると、右の15倍のほうに軍配を上げざるをえない。
「比較対照がビクセンの10倍ではなぁ・・・」という意見もあるだろう。私もそう思っているので、機会があれば、もっと性能のよい10倍アイピースと比較してみたいところではある。