コイヌノエフデの1品種
Jansia borneensis Fischer f. aurantiacus Yoshimi


2003年7月13日、埼玉県皆野町で

きのこ撮りが趣味という人のなかにもいろんな人がいて、しばしば理解に苦しむことがある。例えば埼玉きのこ研究会のK嬢。今風の言い方では「カプセル玩具」とか「フィギュア」とかいうらしいが、昔でいえば「グリコのおまけ」みたいなプラスチックの人形をきのこの傍らに置き、メルヘンチックな写真を撮り続けている。私から見ると、ちょっと変わり者(失礼!)である。
ビニール袋にじゃらじゃらとたくさんの人形を入れて持ち歩き、出会ったきのこのイメージに合わせて選んでいるようだ。今年7月に行われた美の山の観察会では、鑑定会場になった草地に伏せて小さな腹菌類とのツーショットを熱心に撮っていた。で、その様子を興味深く見つめていたのが、動物の糞から生えるきのこや、きのこにたかる虫を撮るのが大好きという、これまた輪をかけて変わり者の(失礼!)横山元氏である。どうやらK嬢の趣味にいたく共感したようで、「俺にも撮らして!」と寄っていき、二人して代り番こに撮り始めた。
「いやはや、物好きはいるもんだ・・・」とばかり冷ややかに眺めていた私であったが、よくよく見ればなかなかきれいな腹菌類である。むくむくと湧いてきた写欲を抑えきれず、「俺も撮るー!」となってしまった。が、当然フィギュアはなし、である。
こうして撮れたのが上の写真というわけ。ふつうのコイヌノエフデと違うところは柄の色で、鮮やかなオレンジ色をしている。故・吉見昭一はこのタイプをコイヌノエフデの1品種とし、Jansia borneensis Fischer f. aurantiacus Yoshimiと名付けた。和名は当初「コギツネノエフデ」とされ、保育社の「原色日本新菌類図鑑」には簡単な紹介文が載っている。ただし、吉見はそののち和名を変更したようで、「日本きのこ図版」(通称・青木図版)では「ウスキコイヌノエフデ」の名があてられている。ここではたんに「コイヌノエフデの1品種」とした。

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