ウシグソヒトヨタケ
Coprinus cinereus


2004年5月9日、さいたま市郊外で

黒く溶けやすい「インキー・キャップ」のなかでは、もっともふつうに見られ、サイズもかなり大きなほうだ。学名のCprinus cinereusは「灰色のヒトヨタケ」という意味。春から秋にかけて、公園に敷かれたウッドチップ、野積みされた古畳、草食動物の糞を混ぜた堆肥上などに群生する。
代表的な糞生菌の一種で、馬糞混じりの藁の山、牛糞混じりのおが屑堆肥の上には、100%に近い確率で発生するが、糞のないウッドチップ上にもよく見かける。
柄の基部は根状に伸びるのがふつうだが、伸びないこともある。 ウシグソヒトヨタケより胞子が大きいものをネナガノヒトヨタケとして区別することがある。肉眼的にはほとんど区別がつかないが、「ウシグソヒトヨの方はカサが溶けてしまったあとでも、クキはシャンとしてつっ立っているが、ネナガノヒトヨタケの方はペシャペシャとたおれてしまうので見分けがつく」と吉見昭一が言ったという話を、「日本きのこ図版」No.278で青木実が紹介している。
青木の観察によると、「早春または晩秋の気温の低いときはネナガノヒトヨタケが多く、夏の暑いときにはウシグソヒトヨタケが多いようである」とのこと。
ちなみに、「日本きのこ図版」に記された胞子サイズは、ネナガノが11.5-14.5 x 7-8.5 µm、ウシグソは7.5-10 x 5.5-6.5 µmとなっている。私は2個しか測っていないのだが、10 x 6.5 µmほどで、いちおうウシグソのほうに該当する。とはいっても、両者の中間サイズの胞子を持つものもあるそうで、どうにも釈然としない。 胞子サイズがどうこうよりも、むしろ「クソ暑いときに、傘が溶けてもシャンとしてつっ立っているからウシグソなんだ」と言ってくれたほうが、我々素人にはわかりやすい。しかし、よくよく考えると、やっぱり釈然としないのである。

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