シロタマゴテングタケ
Amanita verna


2002年7月7日、栃木県みかも山公園で

ドクツルタケとシロタマゴテングタケはよく似たきのこだ。一方が「毒」で他方が「食」なら誰もが見分けたいところだろうが、どちらも猛毒ときているので、きのこ狩りでは区別する必要がない。しかし、きのこ観察では、こういう紛らわしいきのここそ同定のし甲斐があるというものだ。
さて、一般によく言われるのが、「柄のツバより下にササクレがあるのがドクツルタケ、柄のツバより下にササクレがないのがシロタマゴテングタケ」という見分け方だ。では、この写真のきのこはどうだろう。つばより下の真ん中辺はササクレがないが、それより下はささくれているように見え、なんとも中途半端である。
しかし、シロタマゴの柄にも綿毛状の鱗被がないわけではなく、通常は圧着しているために平滑に見えるだけのことである。したがって、多少のササクレがあったところで不思議はない。それに、富士山で見られる典型的なドクツルタケに比べれば、明らかにササクレ具合は弱い。
また、発生環境も同定の一つの目安にはなるだろう。写真のきのこは広葉樹林に出ていたものだが、スイスの図鑑によると、シロタマゴは温暖な地域の広葉樹林に発生し、なかでもコナラ属の樹木との相性がよいという。一方のドクツルは、広葉樹林にも出ないわけではないが、どちらかというと針葉樹林のきのこである。

次に傘の形状を見てみよう。ドクツルであれば、めいっぱい開いた状態であっても、傘の中央が山状に盛り上がっているのがふつうである。しかし、写真のきのこの開いた傘はほとんど平坦であり、盛り上がっているとは言い難い。
「KOHで黄変するのがドクツル、黄変しなければシロタマゴ」というのもよく聞く話で、両者を取り上げた図鑑にはたいていそのことが書いてある。KOH(水酸化カリウム)は顕微鏡観察でもよく使われる試薬で、我が家には3%、20%など濃度の異なるKOH水溶液が3つある。そのどれをたらしても、傘もひだもまったく反応しなかった。

次に胞子を覗いてみた。水で封じたときに大きな油球の見える胞子は、シロタマゴテングタケの特徴の一つとされる。胞子に油球の見られるAmanita(テングタケ属)はどちらかというと少数派で、確かめたわけではないがドクツルタケの胞子にも油球は見られないようだ。
というわけで、このきのこがドクツルタケでないことは明らかとなったわけだが、絶対にシロタマゴテングタケかと聞かれれば、いまひとつ自信がない。まあ、当たらずとも遠からずといったところだろう。

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