ワライタケ
Panaeolus papilionaceus (Bull.:Fr.) Quel.


1999.06.26 浦和市郊外で

幼稚園にあがる前の子供の頃、家の前の県道はまだ未舗装で、荷馬車の馬の糞が道端でも見られたものだが、もはや都市近郊で馬がいる場所といえば、競馬の施設か乗馬クラブくらいのものである。そんなわけで馬糞を好むヒカゲタケ属のきのこは意外と希少な存在になっている。ワライタケもその仲間だ。
晩春のある日、馬糞の香り立つ休耕地できのこ観察をしていたら、農作業のおばさんが不審そうに寄ってきた。こんな時はまず「こんにちは!」と挨拶する。きのこの写真を撮っていると言うと、きのこなんかあるのかと聞くから、そばに生えているツバナシフミヅキタケやセンボンサイギョウガサを指し示して、名前を教えてあげた。すると俄然興味を持ったようで、草をかきわけて探し始めた。まもなく「これもきのこ?」と手招きする。覗いてみると、蜂の巣を連想させるハタケチャダイゴケの塊であった。農家の女性、侮り難し、私には見つからなかったのに。
「ワライタケっていうのを探してるんですよ」
「名前は聞いたことがある。どんなきのこなの?」
好奇心旺盛な人らしい。それとも畑仕事の休憩のつもりだったのかな? この日は残念ながら見つからなかったが、ひと月ほど後、別の場所で見つけることができた。


ワライタケの胞子

ワライタケは中枢神経に作用する神経毒を持つきのことして有名だが、決して食欲をそそらない地味な姿ゆえ誤食はまずありえない。傘径2〜4cm、柄の長さ5〜10cm。春〜秋、牧草地、芝生、牛馬の糞などに発生。しばしば亀甲(きっこう)状にひびわれる。長らくヒカゲタケ(Panaeolus sphinctrinus)と区別されてきたが、最近では同種と考えられている。

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