ウスベニイタチタケ
Psathyrella bipellis (Quel.) A.H.Smith


99年4月25日、浦和市の公園で

春うららかな雨後の昼下がり、いつもの公園にきのこ観察に出かけた。ウッドチップを撒いた植樹帯には、ツバナシフミヅキタケが群生し、シロフクロタケ、サケツバタケ、ツブエノシメジ、ナヨタケ属など、公園の常連たちが顔を連ねていた。ウッドチップというのは本当にきのこのパラダイスである。マッシュルームを3パックくらい買ってきてばら撒けば出そうだなと思うが、べつに出たからどうということもないので実行する気はない。
さて、そんな中でひときわ目を引いたのがこのきのこだ。しっとりしたワイン色っぽい傘が美しい。去年も見た記憶があるのだが、この場所ではなかった。どこだっけ? ナントカイタチタケとかいったっけ? 何だっけなぁ。名前が思い出せず、家に帰って図鑑を開くと、山渓「日本のきのこ」のセンボンクズタケに似てはいるが、センボンクズタケのような典型的な束生ではないし、それほどスレンダーでもない。埼玉きのこ研究会の先輩である横山氏と坂本氏に写真を送って見てもらうことにした。この公園の付近は両氏の日常的な観察フィールド、いわば巡回コースなので、必ず実物を見ているはずだった。ふつうなら写真とつたない説明だけでは同定しがたいものだが、同じきのこを同じ場所で同じ時期に見ていれば話は別である。メールに縮小画像を添付して送るとすぐに返事が届いた。両氏の回答はともにウスベニイタチタケであった。そういえば去年横山氏から現場で教わったきのこである。公園からちょっと離れた斜面林に出ていたことを思い出した。
手元の日本の図鑑でウスベニイタチタケを掲載しているのは保育社の原色日本新菌類図鑑だけだが、試しにフランスやスイスのきのこ図鑑を開いてみると・・・おー、これ!これだ! イギリスやアメリカのも手元にあるが、横着して見ていない。日仏スイスの3冊で確認できればもう十分!
いちおう参考までに保育社の図鑑の記載内容の一部を紹介しておこう(以下、抜粋的引用)。

「傘は径2〜3センチ、初め鈍円錐形のち中高のちほぼ平らに開く。表面は湿っているとき暗紅褐色、乾けば淡紅褐色となり放射状の小じわがあらわれる。ひだは直生し、やや疎、暗紅褐色より黒褐色となり、縁部は白粉状。柄は4.5〜8センチ×3〜4ミリ、多少屈曲し、中空、表面は絹糸状〜繊維状、上部は白く下方へ紅褐色〜暗紅褐色を帯びる。春〜夏、畑地、庭園、叢林などの地上、切り株上に群生。分布:日本(京都・埼玉)・インド・ヨーロッパ・アフリカ・北アメリカ。全体にぶどう酒色〜サクラ色をあらわすのが特徴である」

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