センボンサイギョウガサ
Panaeolus subbalteatus (Berk. & Br.) Sacc.


1998.05.20 浦和市郊外で

ヒトヨタケ科には4つの属がある。ネナガノヒトヨタケやササクレヒトヨタケなどのヒトヨタケ属、ナヨタケ、イタチタケ、ムジナタケなどのナヨタケ属、ジンガサタケ、ツヤマグソタケなどのジンガサタケ属、そしてワライタケ、センボンサイギョウガサなどのヒカゲタケ属である。
ヒカゲタケ属なんていうと名前からして怪しい雰囲気だが、案の定というべきか、ワライタケやセンボンサイギョウガサを食すと、一時的な中枢神経の麻痺を伴った中毒を起こすことが知られている。ヒトヨタケ科というのは、けっこう危ない連中も多いのである。
毒の主成分はシロシビン、シロシンという2つの物質だが、シロシンは空気中の酵素によって急激に壊れやすいため、主としてシロシビンが作用するらしい。食べるとしばらくして中枢神経系に作用し、幻覚などの症状の他に、しびれや瞳孔反射がなくなるといった症状が出る。中毒状態は4〜6時間続くが、死亡することはまずないという。ちなみに、同じヒトヨタケ科のジンガサタケ属のキノコからも、ヒカゲタケ属に比べると低濃度だがシロシビンが検出されるそうだ。
また、同様の中毒症状を引き起こすキノコとして、モエギタケ科シビレタケ属(アイセンボンタケ、ヒカゲシビレタケ、オオシビレタケなど)が知られる。こられには手で触ったり傷をつけるとしばらくして青変する特徴がある(ヒカゲタケ属は青変しない)。
以上、知ったようなことを書いたが、滋賀大学横山和正先生の毒キノコDataBaseや図鑑を見て書き写しただけのことで、詳しくはそこら辺を参照していただきたい。


胞子はレモンの形

さて、ヒカゲタケ属の中でも毒性の強いセンボンサイギョウガサは、図鑑によると傘径が2.5cmから4.5cm(上の写真のは3cmくらい)、柄の長さは6〜8cm(写真のは8cmくらい)。傘は湿ると暗褐色〜暗赤褐色、乾くと白っぽくなる。乾くときは縁のほうから乾燥が進み、周辺部は乾燥が遅れて濃い色のまま残り、環状色帯をつくることが多い。ひだは幼菌時クリーム色、やがて色むらのある褐色になり、最後には煤けたような黒褐色を呈す。柄は暗褐色または暗赤褐色で、白っぽい鱗被をまとうことが多い。
とにかく、いかにも不味そうなキノコなので、誤食の可能性は極めて低いと思われる。

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