オニウスタケ
Gomphus kauffmanii


7 September, 2003 富士山で

ラッパタケ属のなかで最も巨大なキノコ。幼菌のときは棒状で、のち漏斗状に開く。内側には粗大な鱗片が見られるが、成長過程で鱗片が剥がれ落ち、底に積み重なっていることがあり、なんとなくコーンフレークを連想させる。
鱗片が大きいのがオニウスタケ(Gomphus kauffmanii)で小さいのがフジウスタケ(Gomphus fujisanensis)と説明しているサイトもあるが、先にも述べたように鱗片は往々にして剥落するので、のっぺらぼうに近い状態になってしまうこともある。鱗片の大小はたんなる「状態の違い」であって、フジウスとオニウスは同種じゃないかなぁという気がするのだが、私自身よくよく観察したわけではないので、あまり自信がない。
上に掲載した写真の個体に関しては、幼菌の会編「きのこ図鑑」(家の光協会発行)の記述にある「大型の粗く反り返った鱗片」が顕著であり、海外サイトの写真と比較してもGomphus kauffmaniiに間違いなさそうだと判断し、オニウスタケとした。
ただし、キノコ仲間の間では「オニ」と「フジ」を区別することなく長年「フジウスタケ」と呼び慣わしてきた経緯があり、以下の文中では便宜上「フジウスタケ」を使っている。
さて、このキノコは夏〜秋の富士山ではありふれており、だいたい一か所にかたまって数個から10個以上出ている。わりともろく、強く握ると縦方向にボロッと割れる。ただし、横方向には割れにくい。毒キノコだと言われているが、そんなことを言われるまでもなく、誰がこんなキノコを食うものか、と思っていた。
ところが、である。けっこううまいキノコなのであった。初めて食べたのは1999年8月、富士山で埼玉きのこ研究会の宿泊勉強会が行われた、その夜のことである。「これ何だか分かるかい?」と差し出された皿に盛られた料理は、なにやら山芋の千切りのようであった。ちょっとつまんでみると、非常に歯触りがよく、さっぱりした風味である。もう酒がまわって、できあがっているから、うまけりゃ正体は何でもいい。ぺろりと皿の半分ほどを食ってしまってから、
「フジウスタケだよ」と聞かされ、へぇー、ウッソーという感じであった。会の先輩の山崎さんからフジウスタケの調理法を教わったので、記すことにする。まず、熱湯で湯掻く。湯掻くと毒が抜けるという説もあるが、身を締める意味もある。湯掻いたら包丁で割り、亀の子たわしでこする。胞子のある外側の襞の部分と、内側の鱗片を、たわしでゴシゴシこそげ落とすのである。そうすると山芋の断面のように白くなる。これを包丁で千切り風に切り刻み、皿に盛ってレモン汁としょうゆをかければ出来上がり。
外観からは想像しにくい品のいい風味である。ただし、胞子と鱗片を落としても、やはり多少の毒気は残るかもしれないので、日頃から野生キノコに親しんでいる人にのみおすすめする。ちなみに私は食うためにフジウスタケを持ち帰ったことはなく、この調理法も自分では一度も試していない。面倒くさいもの・・・。

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