ネナガノヒトヨタケ
Coprinus macrocephalus Berk.


2000年6月12日、雨上がりの浦和市郊外で

春から秋にかけて、藁と馬糞の堆肥や、野積みされた古畳、公園に敷かれたウッドチップ上などに単生〜群生。柄の基部はしばしば紡錘形の根状となる。
ウシグソヒトヨタケかネナガノヒトヨタケか、どちらの和名を選ぼうか迷ったが、いくつか測ってみた胞子のサイズが12.5-14.3 x 7.4〜8.3μmあり、ウシグソより胞子が大きいとされるネナガノのほうに該当するため、ネナガノヒトヨタケとした。ただし、ウシグソもネナガノも同種とする説が有力らしいので、どちらでもよいと思っている。
また、学名についても検討を余儀なくされた。ネナガノヒトヨタケの学名は、山と渓谷社「日本のきのこ」では、ウシグソと同じCoprinus cinereusである。しかし、海外の図鑑等に記載されているC.cinereusの胞子サイズはもっと小さい。例えば、スイスのきのこ図鑑Fungi of Switzerlandでは 9.5-11 x 6.5-7.6μm、オランダの研究者キース・ウージェさんのCoprinus-siteでは 8.4-11.8 x 5.8-7.8 μmと記されている。そこで、日本のネナガノヒトヨタケに該当すると思われるC.macrocephalusが適当なのではないかと考えた。(※)
しかし、日本の図鑑でネナガノにこの学名を与えているものはない。その点だけちょっと気になったのだが、このホームページにはいちおう英語版もあるので、海外にも通用しやすい学名を選んだ次第である。
そんな能書きはさておき、とにかく私はこのスレンダーなきのこの姿が好きなのである。典型的なインク・キャップで、採取して家に持ち帰った時には傘が墨汁のように溶けてしまっている。こういう儚さも一夜茸らしくてよい!と思うのである。

 C.macrocephalusの胞子サイズは、スイスのきのこ図鑑では11.2-14.9 x 7-8.8μm、Coprinus-siteでは12.2-16.8 x 8.2-9.8 μmとなっている。また、スイスの図鑑には、Krieglsteinerという研究者が1991年にC.macrocephalusとC.cienereusは同種であると発表した、という記述がある。言いかえると、C.cienereusと同種と解釈されるきのこで、それより胞子が大きいきのこといったら、ネナガノしかないじゃん、ということになる。

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