クロハツ
Russula nigricans (Bull.) Fr.


2005.06.29 川越市郊外で

関東では初夏の雑木林でもっともありふれたベニタケ属の一種。図鑑に「食」とあるが、近縁種に猛毒のニセクロハツ(R. subnigricans)が知られている。
クロハツは切ると断面が黒変するが、ニセクロハツは黒変しない点で判別される。試した人の話では、「クロハツは両断すると1〜5分ほどで白い切断面が赤みを帯び、30分ほどで黒変が始まる。真っ黒になるまでには数時間を要する」という。
ニセクロハツは見たことがないのだが、図鑑で調べてみたところ、黒変以外にも判別のヒントはありそうだ。まず、発生環境が異なる。クロハツは、主として落葉広葉樹の林や、針葉樹の林に出る。一方のニセクロハツはもっぱら照葉樹林(シイ・カシなどの常緑広葉樹の林)に出るらしい。また、ニセクロハツは近畿以南を中心に分布し、関東や東北では稀といわれる。
傘の質感も異なる。ニセクロハツの傘の表皮はややビロード状を帯び、皮を剥ぎ取りにくいという。一方のクロハツにはそうした特徴はない。さらに柄と傘の色のバランスも微妙に違うようだが、写真と記述を見比べてもよく呑み込めなかった。
クロハツは、ニセクロハツの発生しない一部の地域で、きのこの少ない初夏の風味として、主に出汁として用いられているようだ。
ちなみに、クロハツともニセクロハツとも異なる近縁種もあるらしい。
なお、似た名前のクロハツモドキ(R.densifolia)は、ひだが両者と比べて明らかに密なので区別しやすいが、これにも近縁種が2、3あるという。 (26 December, 1998)

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