カシタケ
Russula sp.


99.04.17、茨城県鹿嶋市の雑木林で

野生きのこ愛好家にとってのきのこシーズンは4月から始まる。といっても、食菌の種類は少ないので、桜の開花前後に出るアミガサタケや、ゴールデンウィークの頃に出るハルシメジに俄然注目が集まるわけである。カシタケの一番の魅力も、他に先駆けて顔を出すという点にある。学名が付いていないきのこだが「山渓カラー名鑑 日本のきのこ」や「山渓フィールドブックス きのこ」に掲載されており、前者には「4〜5月ごろにシイ・カシ林に発生。食用にされる」との記載がある。
よく見かけるのはスダジイの周りだ。スダジイは本州の福島・新潟県以南の沿岸部に多く、四国・九州にかけて見られる常緑樹である。
カシタケのもうひとつの魅力は、傘の色にバリエーションがあることで、写真の被写体として面白い。ちなみに、山渓の図鑑にある伊沢正名氏の美しい写真から私は和菓子を連想し、カシタケの「カシ」は「菓子」のことだと長い間勘違いしていた。
99年4月現在までに確認できたカシタケのバリエーションは、濃いアズキ色、藤色(アズキ色を薄くした色)などの紫色系統、深紅、石榴(ざくろ)色、ピンク色などの赤系統、そしてクリーム色型(幼菌)に大別できる。ただし、1本のスダジイの周りに紫色タイプと赤色タイプが混在することはなく、赤色タイプが発生している木の周りは赤ばかりというぐあいであった。また、濃いアズキ色の中にもバリエーションがあり、傘全体がアズキ色のもの、中央が褪色したものなどが同居していた。また、幼菌は基本的にクリーム色系統だが、桃のように白地に赤みを帯びたものや、アズキ色を帯びたものがある。
老菌になると褪色する傾向にあるようで、傘全体がベージュ色の大きなタイプ(傘径12センチほど)も見られた。
このように色が分かれる要因については皆目見当がつかない。そもそもそれらが厳密に同じ種であるという確証もない。
なお、カシタケの色は加熱しても消えない。熱した油や熱湯に色素が溶出するが、完全に色落ちしてしまうことはない。例えば、赤いカシタケを煮込みうどんに入れると汁が赤っぽくなるが、カシタケにも多少赤みが残っている、そんなぐあいである。

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